ハンドベルってどんな楽器?

こんながします!


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はじめに

 楽器の演奏形式には独奏、アンサンブル、オーケストラ等いろいろありますが、ハンドベル演奏はこれらとは全く異なります。例えが良いかどうか分かりませんが野球の守備に似ていると思います。プレイヤー(リンガー)の一人一人が皆違う役割を演じていますが、互いに無関係なことをしているのではなく、全員で一つの仕事をしているのです。ハンドベルは一つの楽器を数人または十数人で演奏し、どの一人が欠けても演奏出来ないという点でユニークであり、プレイヤーは他の楽器では得られない体験と教訓を与えられます。

 ハンドベルの奏者は自分の役割がわずかであっても、それが他の誰にも代わることの出来ない大切な自分の責任であることを自覚するでしょう。そして大切なのは自分だけでなく、他のすべての人が、かけがえのない一人一人であることを悟るでしょう。力を合わせて一つの仕事をするには、思いやりや助け合いはもちろんのこと、人に頼らず自分の役割を果す責任感も必要です。これは社会の一員として生きる私達の大切な心がけでもあると思います。

 ハンドベルはソロ・リンギングといって一人で演奏することも出来ますが、本当の魅力と楽しさは十数人が心を一つにして演奏することにあると思います。


ハンドベルを始めるまでの予備知識

ハンドベルとは

 私達がふつうハンドベルと呼んでいるものは、正しくは、イングリッシュ・ハンドベルと言います。鐘の部分は銅と錫の合金で鋳造されており、その割合は80%:20%でこれは最も美しい音色をだす割合と言われています。

 鐘を鳴らず振子(クラッパー)は一方向にだけ往復するようになっており、ベルを振る度に一度だけ鳴るようにスプリングで調節してあります。

 ハンドベルに表示されている音名と楽譜上の音符の関係は図(1)のとおりです。ただしハンドベルは、実際は1オクターブ高い音を出しますので、A4440Hzに調律されています。

 ハンドベルは16世紀に、イギリスの教会で生まれました。塔の鐘を鳴らすのに、チェンジと呼ばれる一定の順序に従った鳴らし方があり。たとえば、鐘が4個あれば、1234、2143、2413、4231、4321、といったように鳴らします。 4個で24通り、6個なら720通りに順序を変えることが出来ます。

 これを塔の鐘で全部鳴らすには何時間もかかり、順序を覚えるのも大変なので、練習用に考案されたのがハンドベルです。後に、チェンジの練習ばかりでなく、教会の前で、あるいは街角で、キャロルや讃美歌を鳴らすのに用いられるようになり、ベルの数も多くなりました。

 ハンドベルがイギリスからアメリカヘ渡ったのはそれほど古いことではありません。現在アメリカで演奏を続けているグループの中で一番古いものは、 1923年ボストンで生まれました。

 日本で初めてハンドベルが鳴らされたのは1964年、東京で日曜学校大会が催された時で、台湾の高主香さんが、当時教鞭をとっておられた台南神学校の学生を指揮して演奏されたそうです。その後日本の教会や学校で少しずつ使われるようになりましたが、本格的に演奏活動が始まったのは、1970年名古屋の金城学院で宣教師M.I.ケリー先生がハンドベルクワイアを結成した時と言ってよいでしょう。

 アメリカでほ1954年にハンドベルの違盟(AGEHR)が創立され、イギリスでは1967年(HRGB)に、日本では1976年、ケリー先生の祈りが聞かれ、努力が実って日本ハンドベル連盟(HRJ)が世界三番目の連盟として誕生しました。 現在この外、韓国と、カナダ、オーストラリアに連盟があり、2年に1度これらの国で国際シンポジウムが行われています。

メンバーの条件

 ハンドベルは誰にでも演奏できる楽器です。お年寄りでも、幼児でもベルを鳴らしたいという方なら誰でも、なるべく多くの人に使って頂きたいと思います。

 ただ、良い演奏をするために、リンガーに望みたいことがいくつかあります。それは、勝手に練習を休んだり遅刻しないこと。自分の責任を大切にすること。共同作業てすから、協調性のある人、辛抱強い人、また健康な人が望ましいと思います。

 グループのメンバーに選ばれたら、演奏だけでなく、ベルを磨いたり、テープルを片づけたり、部屋の掃除や重いベルのケースを運んだりすることも進んでして下さい。

 なお、学校などの場合には、指導者はハンドベルについて保護者によく説明し、メンバーが練習に遅刻、欠席しないように協力して頂くために家庭とよく違絡を取っておくと良いと思います。


ハンドベルの演奏に必要なもの

ハンドベル

 ハンドベルを何オクターブで始めるかは、そのグループの目的で異なります。 2オクターヴあれば、ほとんどの讃美歌は演奏出来ますが、レパートリーを広げたけれぱ、3〜5オクターヴを用意することをお勧めします。

 ハンドベルはアメリカ製が入手が容易で、シュルメリックマルマークの2社のものがあります。どちらが良いか、それぞれ特長があり、好みもあるでしょうが、すでに使用しているグループの意見を聞いて参考にされると良いでしょう。どちらも東京の聖文舎(tel03-5395-1760・1796/Fax03-5396-1739)が、取り扱っています。

テーブル

 ハンドベルの演奏には、多くの場合テーブルを使います。アメリカで専用のテーブルも作られていますが、食事や会議用のテーブルで充分間に合います。幅は2-3オクターブなら45cmでもよいでしょうが、4-5オクターブには60〜90cmが必要てす。長さは180cm×オクターブ数を目安に考えると良いでしょう。

スポンジ(パッド)

 ハンドベルを直接、固いテーブルの上に置くことを避けるために、スポンジを敷きます。このスポンジはプラックなどの変化奏法の効果のためにも必要でず。フトン屋などで手に入ります。厚さは10cm位、テーブルのサイズに合わせて切ってもらうと良いでしょう。

テーブル掛け

 ハンドベルの演奏は音色だけでなく、見た目も美しくしたいので、テーブルとスポンジを布で覆いましょう。布地は何でもよいのですが、毛羽立つものや、あまり滑りやすいものは避けましょう。

譜面台

 テーブルの幅がせまければ普通の床に立てる譜面台を使うことが出来ますが、テーブルの幅が充分あれば卓上用の譜面台を使います。譜面台の数はリンガー 2人で1つの楽譜を見ますので、10人のグループなら5つ必要(指揮者の分は別)です。

メンバー

 備品を揃えると同時にグループを作らなければなりません。メンバーについて考えましょう。

人数

 ハンドベルの奏者は少なずぎてはベルの持ち変えが出来ず、多ずぎては暇で退屈な人ができるので、適切な人数で始めなければなりません。次の表を参考にして下さい。



							
2オクターヴ  6〜8人 3オクターヴ  10〜11人 4〜5オクターヴ 10〜15人

ハンドベルを鳴らしてみよう!
準備

備品とメンバーが揃ったら、いよいよベルを鳴らしましょう。まずテーブルのセッティングをします。

  • テーブルの並べ方はまっすぐ一列、又はスベースの都合でコの字形かL 字形でもよろしい。安定の良い場所に、脚が固定していることを確かめて並べて下さい。
  • テーブルの上にスポンジを敷き、布を掛けます。

ハンドベルの扱いについて

ハンドベルは大切に扱えば100年以上使うことが出来ます。長い間美しい音色を保つように取扱いに注意しましょう。

まずハンドベルを持つ時は必ず手袋をはめて下さい。これは手の油が鐘の部分に錆を生じる原因になるので、それを避けるためです。錆はベルの音色を悪くし音程を狂わす恐れがあります。木綿の薄手の白手袋が良いでしょう。化繊のものは布地を通して指紋がつきますからよくありません。

ベルのケースを聞けてベルを見て下さい。ハンドルの輪になった方が上を向き音名の書いてある方が横を向いて納めてあります。これはケースの蓋を閉めた時ハンドルに力がかかって割れるのを避けるためで、ケースに納める時はいつもこの向きに入れて下さい。

ベルを取り出す時、ベルとベルをぷつけたりテーブルの角などに固い物にぷつけないように注意して下さい。ベルは傷つき易いですし、落して割れることもあります。目に見えないヒビでも音色を損ないます。

ベルの並べ方

低音の大きなベルは奏者からみて左に、そして音階の順に右へ並べます。これはピアノの鍵盤と同じになります。ベルはハンドルを手前にして倒して置きます。持ち変えが素早く出来るためです。

個人基礎練習

a.)ベルの持ち

ベルを一つ取って鐘の内側を見て下さい。クラッパーの当たるどちらか一方に小さな切傷がついています。これはベルの製造者が、もっともよい音を出す個所を見つけて印をつけたものでストライクポントと言います。普通の耳には間き分けられませんが、べルを作った人の優れた耳に敬意を表してこの印を尊重しましょう。即ち、傷のあるところを向う側にしてハンドルを握って持ちます。ハンドルの輪に手を入れないで下さい。ハンドガード(鐘とハンドルの間の丸い板)に手が触れるようにハンドルの付け根をしっかり持ちます。

b.)鳴らし方と消し方

ベルを胸の前に持ちます。ひじは90゜位曲げます。手首を楽にしてベルを手前に倒して下さい。クラッパーも手前に倒れます。手首のスナップでベルを向う側へたたきつけるようにして下さい。小さなベルは手首だけで、ひじや腕を使わず鳴らせます。大きなベルは、肩も腕もひじも使って鳴らします。ベルの口が前を向かないように、いつも上を向いでいることが大切です。その理由は、ベルを鳴らしてその音がどこから聞こえるか試してみるとよく解ります。ベルの音はラッパのように口からではなく、鐘の回りに波紋のように広がっているのです。

音を長く保つ時は、鳴らした後静かにひじを伸ばし、ベルを、下から上へ弧を描くように動かしながら元の位置へ戻します。

ベルの音は胸につけて消します。小さなベルは鐘の口をつけるだけで消えますが、大きなベルは鐘のカーブした部分もつけないと完全には消えません。倍音が残るのです。手を添えたりテーブルに押し付けて消すことも出来ます。

c.)強弱

鳴らし方を練習する間に自分の受け持つベルについて、手首や腕の力の加減とベルの音の強弱の関係を知ることが出来ます。

以上a.b.c.の練習は右手、左手のどちらでも行って下さい。

グループ基礎練習

個人の練習ができたら、次ぎのようなグルーブ練習をしましょう。

a.)音階練習

上行、下行の音階がスムーズに鳴らせるようにしましょう。この練習で、ベルは鳴らず時と同じように消すタイミングが大切なことが分かります。消すのが早過ぎると音がつながりませんし、遅すぎると次の音と重なって濁ります。

b.)和音練習

この練習では、指揮者の合図でいくつかのベルが一斉によく揃って鳴るようにします。

c.)リズム練習

附点音符、3連音符、16分音符の速い動きなどの練習をします。これらのグループ練習の間に、cresc. dim. rit. accel.などの練習も併せてします。

ベルの配分

曲を始める前に、指揮者にはベルの配分という大切な仕事があります。配分の仕方については図(2)を参考にして下さい。これは一例に過ぎませんが、基本的には、一人が二つの幹音を受け持ちます。そしてその二つの音のシャープ、フラットのついた音もその人の担当になります。

  2オクターブ 8人の場合

  3-4-5オクターブ 10人の場合

  5オクターブ 14人の場合

ハンドベルの楽譜の約束上、C5から下の音はへ音記号の五線上に、D5かから上の音はト音記号の五線上に書くことになっていますので、C5D5を同じ人の持ちベルにはしません。
※メンバーそれぞれの体格その他を考えてポジションを決めて下さい。

曲の練習

さあ、曲をはじめましょう。ハンドベルは聴くよりも鳴らす方がずっと楽しいものです。ハンドベルはメロディーと伴奏を別のパートが演奏するのではなく、同じベルを続けて鳴らしても、メロディーの一部であったり、伴奏の一部であったりします。リンガーに曲をよく理解させ、メロディーを浮き上がらせるように強弱を加減する必要があります。また持ちベルが3つ以上のリンガーがスムーズに持ち変えが出来るように練習して下さい。

変化奏法

ハンドベルは基本的な鳴らし方の外にいろいろ変わった奏法を用いて演奏に変化と楽しさを加えることが出来ます。変化奏法には大きく分けて、音を長く保つためのものと、スタッカートの効果を出すものとがあります。前者にはShake,Swing,L.V.などがあり、後者にはPluck.Thumb Dampなどがあります。表記と奏法についてはこちらをごらん下さい。

楽譜について

出版されている楽譜はコピーしないようにして下さい。アメリカでは作曲者・編曲者・出版者を保護するために無断コピーに対する罰則が大変厳しいのです。日本ハンドベル連盟でも、楽譜の入手が容易になった今、このルールに従いたいと思っています。ご協力をお願いします。

主な変化奏法(記号とその奏法)

1.Shake.=Sk.(シェイク)

手首の力を抜いて、細かくベルを振り鳴らす

2.Tr(トリル)

隣り合ったベルを二つ同時にシェイクする

3.Swing.=Sw.↓↑(スウィング)

ベルを鳴らしてから、ひじを伸ばして腕を肩がら大きく後ろまで振り降ろし、前へ振り戻す

4.Pluck.=Pl. Pizz(プラック)

スポンジを教敷いたテーブルにベルを倒して置き、クラッパーをベルに打ちつけて鳴らす

5.T.D.=Thumb Damp(サムダンブ)

ベルに親指をつけて鳴らす、大きなベルは手のひらでベルを包むように鳴らしてもよい

6.Ring.=R.(リング)

プラック、スウィングなどの変化奏法から昔通の奏法に戻る

7.L.V.=Let Vibrate(レットビブラート)

鳴らしたベルを消さず、音符の長さに関係なく鳴らしたままにする

8.D.(ダンプ)

L.V.で鳴らしたままのベルを消す

9.(マレット)

手に持ったベルを木琴用のマレットでたたく.カーブの最も深いところをただくとよい

10.その他

・プラックと同様に倒して置いたベルのクラッパーを手でたたく
・ベルをテーブルにたたきつける
・上と同様にたたきつけたベルを持ち上げて響かせる
・ミュートの時、鳴らしたベルをテーブルに伏せて音を消す